独占欲高めな社長に捕獲されました
どうせこのあと、高いところでランチして、高いところで買い物して、お茶して……最後は高級ホテルの一室であんなことやこんなことを……。
そんなことを悶々と考えていたら、次の絵がちっとも頭に入ってこなくなってしまった。当然、絵のメッセージも感じ取れない。
くっそー、あんな悪役社長に邪魔されてたまるか! 心頭滅却だー!
ブルブルと強く頭を振り、何度も瞬きして絵の方に向き直る。けれど、一度網膜に焼き付けられた“美しき恋人たちの肖像”はなかなか消えてはくれなかった。
結局、美術館でこれといった収穫は得られなかった。日曜も他の美術館を回り、雰囲気の良い絵は見つけた。けれど、どこか決定打に欠けていた。
「社長め……私の邪魔をするために現れたのではあるまいな?」
もしや、行動を監視されてる?
出勤途中で立ち止まり、勢いよく後ろを振り向く。すると、後方を歩いていた小太りサラリーマンがびくっと全身を震わせ、気味悪そうに私を横目で見て去っていった。
彼は関係なさそうだ。いやしかし、刺客はそれとわかるような格好はしていないはず。一般人に紛れて私を監視して……って、さすがに考えすぎか。