独占欲高めな社長に捕獲されました
緊張しながら言ったので、まるで大学生の採用面接みたいになってしまった。いや、大学生の方がもっと上手に喋れるだろう。
「ああ、美大出身だっけ。そうだなあ、今すぐにはないかもしれないけど、覚えておくよ」
笑顔でさらっと流された。そのような気がするのは私だけだろうか。あまりアピールすると、逆にウザいと思われるかな。でも、やっと勇気を出したんだから。
「今まで以上に頑張ります! よろしくお願いします!」
ビシッと背中を伸ばしたあと、深く頭を下げた。その直前に、びっくりしたような課長の顔が見えた。
「そうか、うん。しっかり覚えたからね」
「ありがとうございます!」
課長の声が聞こえてから顔を上げたけど、まだ仕事をもらえたわけでもないのに「ありがとうございます」は変だったかな。
まだ他の社員や部長がちらほらと残っていたことを思い出し、急に恥ずかしくなった。もう一度だけ課長に会釈し、早足でオフィスをあとにした。