独占欲高めな社長に捕獲されました
「なら、こっちで就職すればいいのに。デザイン事務所なら、こっちにもあるでしょ?」
もう何度同じ会話をしただろう。今度はこちらが苦笑する番だった。
「探してはいるよ。でも私は本格的にデザインの勉強をしたわけじゃない。ただの絵画好きなの。そんな私を雇ってくれるところは、簡単には見つからないよ」
おじいちゃんの影響で、私も幼い頃から絵を書くことが好きだった。なんとか美大に受かり、調子に乗って海外留学までしてしまった。
でも、私はおじいちゃんのようなプロの画家になることはできなかった。
才能がなかったと言えばそれまでだろう。どんなに頑張っても箸にも棒にもかからず、大学三年になるころには自分にさっさと見切りを付け、今の会社に就職を決めた。
デザイン系の仕事に就けたら、好きなことと共通する部分も多いし、頑張れるだろうと思っていた。けれど、現実は厳しい。
「でも昨日、散々愚痴っていたじゃない。ほら、なんだっけ。ヨネちゃんのひ孫さんが大好きな漫画の……」
「プリムーンね。漫画でなくて、アニメね」
「そう、『どうして私があんなダサいアニメ部屋を作らなきゃいけないの! プリムーンだらけで落ち着いて寝られないでしょ!』って叫んでいたでしょ」