独占欲高めな社長に捕獲されました
閉鎖的な空間だからこそ、癒される。そう思うのは、私が横川円次郎の孫だからなのかな。世間のほとんどの人は必要としていない画廊。潰してその土地を新しいリゾートホテルに捧げた方が、たくさんの人に喜ばれるのかな。
「余計なことを考えるな。絵を見ることに集中しろ。課題の絵、まだ見つかっていないんだろう?」
社長の声にハッとした。
いけないいけない。なかなか美術館で見られない作品が多いんだから、集中しなくちゃ。
目の前の絵画に意識を向ける。するとすぐ、その世界に入り込むことができた。筆の跡や色彩から、画家のメッセージが聞こえてくるようだ。
私と社長は無言で作品を見つめた。全ての作品を見終わったところで、受付にいた男性が声をかけてくる。
「西明寺さま、お時間があるようでしたら上の階の展示もご覧ください」
なんと、このギャラリーにはまだ違うフロアがあるらしい。私が目を輝かせると、社長はうなずく。
「ええ、見させていただきます」
「この前おいでいただいたときとはがらりと変わっております。日本にあまり来ない作家の作品が何点か入りました」