独占欲高めな社長に捕獲されました

昨夜おばあちゃんが出してくれたワインを飲んだ私は、相当荒れてしまった。

だって、申し訳ないとは思うけど、仕事の愚痴聞いてくれるのなんて、おばあちゃんだけなんだもん。

東京には友達はいない。同僚はいるけど、彼らに愚痴なんて零せばどこでどう伝わって自分の首を絞めるかわからない。

「あれは本当にひどいのよ」

まだ有名テーマパークのオフィシャルホテルのように、動物のキャラクターの輪郭をあちこちに散りばめる、くらいならいい。

「知ってる? 五色のコスチュームの女の子がいるのよ。ピンク、青、緑、黄色、オレンジ。その子たちがどーんと壁全体にいるのよ」

「昨夜聞いたわ」

「顔の半分くらい目のキャラクターなのよ。それが部屋じゅうにいるのよ。気が狂いそうでしょ!」

大きな声で力説する私に、おばあちゃんがしっと指を唇の前に出す。

ハッとして振り返り、ガラス戸を開ける。すると、ギャラリーの入口にお客さんがひとり立っていた。

高級感のあるスーツ。ボタンダウンのシャツ。きりりとした彫りの深い顔立ち。

「あ……!」

あの、やけにほんわかした猿の絵の前で会った人だ。びっくりして思わず声を上げた私を一瞥し、男性はおじいさんの絵を眺める。

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