残念系お嬢様の日常


どうやら私もついにワサビクリームを引き当ててしまったらしい。

くっ、苺のプチタルトのカスタードクリームの下に敷かれた生クリームはワサビ入りだったか!


「うわはははははっ! 真莉亜っ、変顔しなくていいのよ! だめ、おもしろすぎっ」

変顔してねーよ!

みんな私の方を見て吹き出したり、笑いを堪えたりしている。

そんなに酷い顔してるの!?

あ……でも唯一桐生は眉間にしわを思いっきり寄せている。この人の笑ったところって見たことないな。



それなりに人数がいたのできちんと完食をして、日が暮れないうちに第二茶道室を出た。


このメンバーでケーキを食べることになるなんておかしな日だったけれど、案外こういう日常も楽しかったかもしれない。


スミレの猫かぶりはバレてしまったけど、この人たちならわざわざ言いふらすこともないだろうし、第一他の人たちはすんなりとは信じないだろう。普段のスミレとは全く違うし。


最後に茶道室を出て戸締りをしていると、足元にゆらりと影が落ちた。




「ねえ」




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