残念系お嬢様の日常


耳を擽る甘ったるい声。

私はできるだけ動揺を悟られないようにゆっくりと息を吐き出してから、振り返る。



「どうして浅海奏を助けたの?」

彼が私に向けてきたのは、好奇心と警戒心が入り混じったような決して胃に優しくはない微笑みだった。


天花寺みたいにのほほんとしているタイプや桐生みたいに明らさまに嫌悪感を出しているわけでもない。

優しい声音で話しながら、冷たい瞳で私を捉える雨宮は一番扱いづらい。


「……嫌がらせを受けていたからです。他に理由が必要かしら」

「いや〜。でもさ、なんか引っかかるんだよね。君が浅海奏を助けるメリットなんてないし、黙っていても悠みたいなお人好しが助けるはずだ」

「天花寺様はそうでしょうね」

「ほら、君もそう思っているのにどうしてわざわざ動いたの〜?」

実際動いたときには天花寺が動くってこと頭から抜けていたんだけどね。

それにしても、なにかなぁこの尋問っぽい嫌な感じは。

つまりは雨宮は私が純粋に浅海さんのことを想って助けるような人間には思えないってことか。




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