残念系お嬢様の日常


「俺のようなタイプ、ねぇ」

「ええ。人と常に距離を置いて傍観している臆病で慎重な方のことです」


嫌な顔をされるかと思ったけれど、雨宮は目を見開いて硬直している。

漫画の知識があるから、雨宮の事情も少し知ってる。

いつもにこやかだけど、本当は臆病で大事なものができることを怖がっている人。

原作で最初はヒロインのこと警戒してて、自分たちの内側に入ってくることを恐れていたんだよね。


「甘い毒だったら、俺は大歓迎だけどね」

「猛毒かもしれませんわよ」

肩を震わせて笑い出す雨宮は顔がくしゃっとなっていて、子どもっぽい笑みだった。

いつもは何を考えているかわからないような表面上の笑みって感じがしていたから、こういう一面を見ると少し気が緩みそうになる。


ここは漫画と同じ世界観だけど、この世界にいる人たちはちゃんと生きていて全てが漫画と同じわけではない。

だってこの展開だって原作ではなかったはずだ。




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