残念系お嬢様の日常


雲類鷲家には、温水プールの他にトレーニングルームが設備されている。これはお父様が鍛えることが趣味で様々な機器があるのだ。

ランニングマシンはもちろん、ウエイトトレーニングのできるマシンや広背筋を鍛えることができるマシン、ダンベルもある。


私は逃げるためと押されても踏ん張れるように足を鍛え、襲われても抵抗ができるように腕を鍛えることを開始した。私にはあまり時間が残されていない。目指せ細マッチョ。

けれど、ひたすら鍛えていくのは退屈だし、精神的に少しきつい。そこで私は褒めて伸ばす作戦を考えた。


「おーっと、真莉亜選手いい走りっぷりですねー! フォームを崩さずに実にいいペースを保ち続けていますね。どう思いますか」

「そうですね。少しゆっくりには感じますが、先のことを考えた非常にいい作戦だと思います。いきなり運動のしすぎはよくないですし、人にはそれぞれペースというものがありますからね。その点真莉亜さんはご自身のペースをわかっていらっしゃると思います。さすがアスリートですね」

「なるほど。人生がハードモードに切り替わったとわかった真莉亜さんは必死に立ち向かおうと己を鍛え始める姿に私は感涙しました。おっと、真莉亜さん、ここでマシンを止め、ペットボトルの蓋を……開けたー!」

「……見事な飲みっぷりです。水分摂取は大事ですからね。さすがです」


一つ言っておくとこのトレーニングルームには私しかいない。私は私を励ましながらトレーニングを続けた。


これが私の編み出したトレーニング法だ。

この世界に雲類鷲真莉亜として生まれてしまったからには、私は立ち向かうしかないのだ。絶対殺されてたまるもんか。メラメラと心の中で炎を燃やしながら私はトレーニングを続けた。


翌朝、筋肉痛でベッドから起き上がることができなかった。




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