残念系お嬢様の日常


どうしてこんなことを言われても雨宮はなにも言わないのだろう。

表ではキャーキャー言っている女子たちが影でこんなことを言っていて腹がたたないの?


それなのに雨宮はいつも笑顔を振りまきながら、優しい対応をしている。

確かに雨宮はなにを考えているのかわからないけれど、三男だとかそんな理由で本命にはならないとか上から目線で言われたら誰だって腹がたつと思うんだけど。


「みっともない会話をいますぐやめて、医務室から出ていきなさい!」

カーテン越しに声を張り上げる。

どうせ誰なのかは向こうにはわからないだろうし、いつもよりも強気になれた。

たとえカーテンを開けられたとしても青ざめるのはあちらだろうしね。


「やだ、誰かいたの!?」

「行きましょ」

寝ている人がいることに気づいていなかったのか、女子たちはバタバタと足音を立てながら大慌てで医務室から出て行った。ようやく静かになった医務室で雨宮と視線が交わる。


「別によかったのに。こんなもんだよ、俺への評価なんてさ。……でも、ありがとう。怒ってくれて」

「雨宮様のためではありません。彼女たちに腹がたちましたので」

少し悲し気に笑う雨宮を見て、胸に鈍い痛みが広がっていく。

そんな顔するくらいなら怒ればいい。それなのにどうして雨宮はなにも言わずに聞いていたんだ。





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