残念系お嬢様の日常
それよりもこの状況危険だ。
あの雨宮が私みたいのに本気で手を出すとは思えないけれど、もしも誰かに見られてもしたら大変なことになる。
「聞きたいことがあるんだけど」
「……なんですか?」
「君さ、本当は浅海奏が女だってこと最初から知っていたんじゃない?」
「へ……?」
「君は何者なの?」
空気が変わった。
呼吸をすることすら躊躇うくらいの緊迫した空気が私たちを纏い、鼓動が加速していく。
ベッドの上で二人きりというシチュエーションで、おまけに逃すまいと腕を掴まれているというのに、甘さなんて微塵も感じない。けれど、気を抜いてはいけない。
浅海さんを最初から女だと知っていたんじゃないかって、答えはYESだけれど、問題なのはどうして雨宮がそう思ったのかだ。
私は動揺を押し隠すように自由な方の手を胸元に持っていき、薔薇のブローチに触れる。
そして少し長めに空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。