残念系お嬢様の日常
落ち着け。大丈夫。このくらい予想できたはずだ。
ただ相手が雨宮だっただけ。まあ、この男だから特にやりにくいっていうのもあるけど。
「ずっと思ってた。この日常の中で、君が一番異質だ」
雨宮は探るような眼差しで私を見つめていて、顔を背けてこの場から立ち去りたい気持ちもあるけれど、それが叶うような状況ではない。
「……異質とはどういう意味でしょうか」
「俺が知っている君と、今の君は全く違う」
手のひらにじわりと嫌な汗が滲み、心臓が主張するように大きく脈をうつ。
意味深な言葉を並べて、確信には触れないで話を進めているように思えた。
きっとこの人も警戒しながら話している。私には彼がなにを言いたいのかは大方予想は出来る。
「俺は君の秘密を知りたいんだ」
動揺を見せたらいけない。その瞬間、相手が一気に優位に立つ。
私だって今まで準備をしてきたのだ。相手が男だとはいえ、それなりに力をつけてきた私はいざとなったら油断させてこの手を振り払って逃げることだってできるはずだ。
今までのトレーニングは決して無駄ではない。
それにもしも私の予想通りなら、これはチャンスかもしれない。