残念系お嬢様の日常


「貴方も異質ですわ」

「そうかもね」

「一つ、質問をしてもよろしいかしら」

「どうぞ」

緊張からきているものかもしれないけれど、口の中が渇く。自分から出る声がまるで違う人のもののように硬くて声量もなく、唇も思うように開いてくれない。

それでも確認しないといけない。

これが好機となるか危機となるかは、私の質問に対しての彼の反応にかかっている。


「雨宮様は浅海奏が女性だということを最初から知っていたのですか」

先ほど彼がしてきたのと同じ質問を返してみると、雨宮はただ微笑むだけだった。

つまり、これは肯定ととってもよさそうだ。


「まるで雨宮様は私のことをずっと前から知っていたように聞こえます」

「そうだね。知っていたよ」

ずっと前から知っていた。それはいつからを指すのだろう。

初めてまともに会話をしたのは中等部の卒業式だ。木に登ってパンツを見られてしまったときは、中等部三年の夏。


彼の言う〝ずっと〟はそれよりも前だとしたら……。




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