残念系お嬢様の日常
「私も雨宮様のことは知っていましたわ。きっと私たちは同じなのかもしれませんね」
「……それは、」
「雨宮様、遠回しにではなくてはっきりとおっしゃってください」
探るように話す雨宮は私の反応一つひとつを見逃さないようにしているように見える。
きっと彼も私と同じだ。
「君はこの世界をどう思う?」
他者が考えた役者に勝手にされていて、それに気づいているのは私だけではなかったのか。
結末が喜劇なのか、または悲劇なのかは原作という台本があることを知っている自分次第だと思っていた。
でも、台本があることを知っているのは私だけじゃなかったんだ。
「シナリオの中の世界みたいだと思いますわ」
「やっぱりそうか」
緊張の糸が切れたように雨宮が小さく息を吐いて、私の腕から手を離した。
解放された手を押さえながら、雨宮の様子を窺う。
私と同じ存在であれば雨宮が私に対して警戒していたことに納得ができる。
だって雨宮が知っている〝真莉亜〟と、今の私はかなり違う人物に見えるだろうから。