残念系お嬢様の日常
「かわいい独占欲ってやつなんじゃないのかな〜」
「よくわかんないよ」
「悠はいいよ、それで。なにも悪いことしていないからさ」
雨宮はいつもはっきりと答えを言ってくれないのでもやもやする。
でもまあ、パペットちゃんの件は私の事件とは関係ないだろうな。もしも関係あれば雨宮に強引に吐かせる。
雨宮なんてもう怖くないし。いや、怖くないけど、含みのある笑顔でこっちみないで!
くっそー!こっちが優位に立った気でいたけど、そんなことなかった。雨宮はいつの間にか余裕のある感じで、まるでこっちが手のひらの上で転がされている気分だ。
「真莉亜様!」
夏休み前の緊張感のない空気の中に余裕のなさそうな乱れた声が廊下に響き渡った。
「え?」
前方から生徒たちの集団の隙間を縫うように逆走しながら、こちらへやってきたのは普通ならここにはいないはずの人物だった。