残念系お嬢様の日常


顔真っ赤にしている天花寺は置いておいて、希乃愛の言っていたことの方が気になる。

希乃愛は少し怯えたような表情で、声を震わせながら話し出した。


「真莉亜様が浅海先輩を退学に追い込むことができれば、花ノ姫に入れてくださるそうだと知った中等部の女子たちが……浅海先輩を呼び出して連れて行きました」

うわー、いつ私が言ったの。それにしても中等部が動くとは。

大方原作通りに話が進んでいるけれど、おかしい。私は一切浅海さんを嫌うような言動はとっていないはず。


「浅海さんはどこへ連れて行かれたかわかる?」

「えっと……私が聞こえた会話だと、終業式でホールに集まっているうちにプールへ連れて行こうと話をしていましたわ」


なるほどね。先生たちは点呼なんてとらないので、何人かいなくても気づかれないだろう。

それに人がごそっといなくなる今なら誰かに目撃される可能性も低いだろうし、やるなら今だとでも考えたのだろう。そうだ、この展開も原作であった。


「真莉亜様……こんないじめみたいな真似、おやめください……っ!」

声を震わせながら潤んだ瞳で訴える希乃愛。

その声はよく通り、廊下にいる人にはまる聞こえのようで振り返った人たちからの視線が痛い。




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