残念系お嬢様の日常
希乃愛は真莉亜や久世のことは好きなんだろうけど、大人しいわりに正義感に溢れているというかダメなことはダメとはっきりと言う性格だ。
原作でも真莉亜がいじめをしていると知って止めに来たことがあったなぁ。けど、そんな希乃愛に対して真莉亜は聞く耳を持たなかった。
とにかくこの状況は最悪だ。先ほどよりも人が疎らにはなってきているとはいえ、私がいじめをしていると誤解されそうだ。更に変な噂をたてられないといいんだけど。
「貴方、それ本気で言っているの?」
彼女の静かに怒りを含んだ声を聞いたのは、あの花会以来だった。
ホールへと向かうために私たちのクラスの前を通るスミレはちょうど会話を聞いてしまったようだった。その隣にいる瞳も顔を顰めて希乃愛に冷たい視線を向けている。
「真莉亜がいじめをするなんて貴方はそう思っているの?」
「だいたいあの真莉亜がいじめなんてデマに決まってる。真莉亜と親しいのなら、花ノ姫である彼女を貶めるようなことを言うのはよくないよ」
「わ、私そんなつもりでは……」
気圧された希乃愛は涙目になりながら弱々しく「申し訳ございません」と返した。
希乃愛がそう思ってしまうのは仕方ない気がする。
希乃愛が知っているのは前世の記憶が戻る前の傲慢な真莉亜で、中等部と高等部で離れているため普段の私をあまり知らない。