残念系お嬢様の日常
私の声に驚いた中等部の女子たちが一瞬表情を強張らせたけれど、こちらを見て安堵したように嬉しそうに微笑んだ。
その微笑みにぞっとした。身体の内側から酷く冷えた感情が蠢き、今度は私が表情を強張らせる。
私が来たことに安堵したのは、自分たちが〝真莉亜〟の望むことをしていると本人に気づいてもらえたと思ったからだ。
「おやめなさい」
慌てて彼女達の元へと駆け寄り、浅海さんをプールから遠ざけようとした瞬間ーーーー黒髪を高い位置で一つに結んでいる女の子が浅海さんの肩を押した。
咄嗟に私は浅海さんの手を引いて、プールサイドへと突き飛ばして落ちることを回避した。
どうやら私は日頃の成果がここでも発揮されていることに気が緩んでしまったようだ。
「え!?」
誰かが私の背中にぶつかり、バランスを崩して身体が傾く。
うそ……マジで。
「雲類鷲さん!!」