残念系お嬢様の日常
私にしか聞き取れないくらいの声で言うと、雨宮は桐生たちの元へ行ってしまった。
その後ろ姿をぼんやりと眺めていると、スミレと瞳に替えの制服を借りに行こうと言われてタオルに包まれたまま立ち上がる。
幸い今なら生徒たちは終業式でいないだろう。
頬に纏わりつく髪を耳にかけて、視線を上げるとガラス張りの二階のルームが見えた。
「……っ!」
ぞくりと全身が粟立つ。
なに……この嫌な視線。鼓動が焦るように大きな脈を打つ。
誰かがこちらを見下ろしている気がして目を凝らす。けれど、反射していて顔が見えず、かろうじて女子生徒だということだけはわかった。
おかしい。今は終業式のはずだ。それなのにどうしてあそこに人がいるの。
「真莉亜? どうしたの」
「……なんでもないわ」
瞳に呼ばれ、一瞬視線を逸らすと二階にいた人物はいなくなっていた。
私の知らないところで一体何が起こっているんだろう。