残念系お嬢様の日常


「そうなのですね。なんだか真莉亜様、変わられましたね」

きょとんとした様子でつぶやくように言った希乃愛に対して微苦笑を浮かべる。

変わった理由を説明できない。言ったところでおかしくなってしまったと思われるだろう。けれど、変わったと言われるのはいいことだ。

以前の真莉亜のままだったら確実に原作の道を歩んでいるだろうし、今回事件が起きてしまったけれど全てが原作通りというわけではなかった。


きっと私の行動次第で未来は変えていけるはずだ。



「あ……お電話みたいですよ」

希乃愛の指差す方向に視線を向けると、ベッドの上で振動している携帯電話が目に止まった。

受話器のマークと『瞳』という名が浮かび上がっているのを確認した瞬間、心臓が跳ね上がり、額にじわりと嫌な汗をかく。


「出なくてよろしいのですか?」

ひい。不思議に思われてる。なんとか切り抜けないと!


「ええ、あとでかけなおすわ」

希乃愛に怪しまれないようにいつも通りの微笑みを心がける。

今出たらまずい。まさかこのタイミングで電話をかけてくるとは思わなくて、心臓に悪いよ。

けれど、『瞳』と登録した過去の自分に感謝だ。



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