残念系お嬢様の日常
「久世のやつがきた」
「へ?」
「おい、もっと丁寧な言い方をしろよ」
蒼と同じくしかめっ面の久世が現れて、顔が強張る。
ひえー、やだやだ睨むなっての。今日は約束の日でもなんでもないのに何故久世がここにいるんだ。
希乃愛を見やると彼女も驚いている様子なので、どうやら久世は希乃愛の迎えなどではなく単独で来たらしい。
「どうして貴方がここに?」
わざわざここまで来るくらいの用件が思いつかないけど、久世が絡むとあまりいいことな予感がしない。それに怖い顔してるし。
「希乃愛からプールに落ちたと聞いた」
「そうでしたの」
それで心配してくるなんて久世らしくない。
この男は私の心配なんてしないはずだ。幼い頃からずっと私たちは険悪な仲なのだから。
普通なら「へえ」だけで終わりそうな気がするんだけど、一体なにを言いに来たのだろう。