残念系お嬢様の日常
「ご心配ありがとうございます。ですが、私は大丈夫ですわ」
語気を強めてはっきりと言い放つ。
久世との関係を悪化させる気はないけれど、親しくする気もない。
それにさっき婚約破棄したいアピールはしておいたし、久世としては万万歳だろう。彼だって私と婚約破棄したいはずだ。
もしも久世が犯人だった場合、動機は婚約問題の可能性が高い。
これでこっちも破棄する気ありますよってことを伝えておけば、久世もこんな女と将来を共にするなんて嫌だ!って自暴自棄にならないだろう。
まあ、犯人だった場合の話だけど。
「希乃愛、帰るぞ」
久世の後を追うように部屋を出て行こうとした希乃愛が振り返り、そっと耳打ちをしてきた。
「ヤキモチですわ」