残念系お嬢様の日常



「蒼から補習の日と旅行を予定している日が被っているって聞いたわよ」


しまった。すっかりそのことを忘れていた。

夏休みでぐうたらできることに浮かれていて、補習の日程をちゃんと確認してなかったんだよね。

確か七月は四日間くらいしかなかった気がするんだけど、それが旅行と被ってたんだ。


「旅行は母さんと父さんの二人で行ってきたら? 二人で旅行なんて滅多にする機会ないでしょ」

蒼がやんわりとした口調で言うと、お母様の目が一瞬輝いたように見えた。

手を頬に添えて、「そうねぇ」と呟く口元が緩んでいる。どうやら、お母様的にはそれもアリらしく嬉しそうだ。


「俺は姉さんのお守りをしてるよ」

ん?


「まあ、それなら安心だわ。この子を一人にするとなにをしでかすかわからないもの」

んん?

ちょっと待ってよ、お守りってなに。私は蒼と同い年だし、高校生なんだけど。

小さい子どもみたいな変な扱いしないでよね。

と、言いたいものの今の自分の置かれた立場を考えるとなにも言えない。




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