残念系お嬢様の日常
「うわっははっははは! お待ちなさい! 幽霊!」
何故か虫とり網を持ってこちらに向かって走っているスミレと、黒い布を纏って顔を隠しながら誰かが逃げている。
その後ろの方で瞳が呆れた面持ちで立っていて、足元には虫かごがある。
「アホがいるわ」
「アホがいるな」
私と景人はその光景を眺めていた。
「こちらに向かってきているわね」
「……あれ、アンタの知り合い?」
「…………いえ」
とてつもなく知り合いと言いたくない。だって普通幽霊を捕まえようとか思う?
しかも、その手段が虫とり網!? スミレの思考回路は不思議すぎるんですけど!
どうしよう。こっちに近づいてくる。幽霊と出会えたのはラッキーだけど、まさかこんなことになるなんて思いもしなかった。
危険を察知したのか景人はさっと壁に隠れてしまった。ちょっと待って私も隠れたい。