残念系お嬢様の日常


瞳が取り皿を用意してくれて、浅海さんと雨宮がお茶の準備をしてくれている。


スミレは「これ食べたいわ!」と崩壊したお菓子の家の一部を指差しては、桐生に「お前は一番最後に選べ」なんて告げられてキィキィ言ってる。

そんな光景を天花寺と流音様が嬉しそうに眺めていて、平和だなぁなんて思っていると一人いないことに気づいた。


家庭科準備室の方へ行くと、ひとりぼっちの黒子が床に座り込んでいる。

その横に座り、顔を覗き込んでみるけれど、黒子の衣装で顔を隠しているため表情が読み取れない。



「正体、明かさないのですか」

「……僕がいるって知らない方がいいだろ」

景人の言っていることが正しいのかはわからない。

兄が実はこの場にいると知ったら、桐生は表情を強張らせるのだろうか。


でも、彼が向こう側へ行かない理由はそれだけではない気がする。




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