残念系お嬢様の日常



「泣いていいんですよ」


多分これが今の景人に必要な言葉な気がした。



「……そんなかっこ悪いことできるかよ」

「いいじゃないですか、かっこ悪くて。誰も責めません。私だけの秘密にしといて差し上げます」


普段散々言われるお返しとして少し上から目線で言ってみるけれど、珍しく景人は何も言い返してこない。


「大事に思ってくれる幼なじみの女の子がいるのは、とても幸せなことですよ」

「別にアイツは」

「自分のことなんて大事に思っていないって言いたいのですか? だとしたら、景人様は大馬鹿ですね。アホですよ。鈍すぎますよ」


ここぞとばかりに言ってみても、やっぱり今日の景人は言い返さないので調子狂うな。




< 282 / 653 >

この作品をシェア

pagetop