残念系お嬢様の日常
さて、そろそろ私も向こう側へ戻らないと、彼がここにいることが見つかってしまう。
桐生拓人に見つかりたくないという景人の思いを尊重したい。
きっと彼にもまだ消化しきれない思いがあるんだろうから。
「ありがとう。真莉亜」
立ち上がり背中を向けると、告げられた景人からのお礼の言葉。
こういうところは素直なのね。
「僕、アンタのこと令嬢らしくないし、食い意地張ってるし、アホだと思うけど、結構好きだよ」
褒められているのか貶されているのかわからないけれど、悪い気はしない。
「私も貴方のこと、性格は歪んでいて素直ではないし、面倒な人だと思いますけど、結構好きですよ」
振り返らずにそれだけ告げて家庭科準備室を出た。
時々カウンセリングルームにお邪魔しに行こう。
また美味しい桐生家お弁当をいただきに。