残念系お嬢様の日常

「それにあの頃は俺が笑うと嫌な思いをする人がいるんだと思うと怖かった。今でもあのときの母の俺を蔑んだ目を忘れられない」

「桐生様」

彼が過去の悲しみに飲み込まれてしまわないように名前を呼んでこちらに視線を向けさせた。


「貴方に笑ってほしくないと思う方よりも、笑ってほしいと思う方のほうがたくさんいます。そのことにもう貴方ならお気づきでしょう?」

流音様や景人だけじゃない。

天花寺や雨宮だって桐生が自由に笑えることを望んでいるはずだ。


「……この間、本当に久しぶりにあんなに笑った」

スミレが組み立てたスイーツ欠陥住宅の件ですよね。

つまりは桐生を笑わせたのはスミレってことになるけど、本人は崩れたことすごくショックだった。かわいそうだけど、結果オーライってことでスミレには感謝だ。



「雲類鷲といるとおかしなことばかり起きて、退屈しないな」

「それ褒めてます? 貶してます? 喧嘩売ってます?」




< 293 / 653 >

この作品をシェア

pagetop