残念系お嬢様の日常
まあ、確かに見捨てたら人間性を疑うけどさ。
それでも私にとっては借りだったんだよね。まさか桐生に助けてもらえるとは思いもしなかったし。
「あの時の桐生様はとっても……」
「なんだよ」
言うか迷いつつ、ちらりと桐生の顔色をうかがう。
どうしてこんなこと言おうとしているんだろう。なんかちょっと照れるな。
でもまあ、きっとこの先言う機会なんてないだろうし言っておいてもいっか。
「かっこよかったですよ」
桐生は無言で立ち上がると、背を向けて歩き出す。
よっぽど気に障ってしまったのだろうか。
「あの、桐生様? えっとあの、冗談です。すみません怒らないでください」
桐生が怒るとかなり厄介そうだ。
怖そうだし。というか普段から仏頂面が怖いし。
「っ、冗談かよ」
「え」
結局どんな顔をしているのかはわからないまま桐生は教室から出て行ってしまった。
どうやら相当機嫌を損ねてしまったらしい。
もしかしたら、かっこいいと言われて柄にもなく動揺したのだろうか。
え、うそ。それならちょっとは可愛いところがあるのかもしれないな。たっくんめ。