残念系お嬢様の日常



「実はお誘いしたとき勘づかれないかひやひやしてました」

安堵した様子で浅海さんが微笑む。

彼女は浴衣姿ではなく私服だった。ダボっとした白のシャツに濃紺のガウチョパンツといったラフな格好なので女の子とは気づかれないだろう。


「全く気づかなかったわ」

「本当ですか? よかったです。隠すの下手なので、ぎこちなく見られたらどうしようかと思っていました」

あのときの私には浅海さんがものすごくイケメンに見えていたから、まんまとさらっとときめかされていました。


「あ、もうすぐ花火始まるよ」

瞳の声がして振り返ると、彼女の浴衣姿に目を見張った。


「瞳、すごく似合ってるわ」

「え、な、なに急に。真莉亜の方が似合ってるよ」

不意打ちで照れたのか瞳にしては珍しく返しがきごちなくて可愛い。

お世辞なんかではなくすごく似合っている。

全体的にすらっとしていて女性的な体つきというわけではないけれど、瞳からはどことなく色気と可愛らしさが混ざり合った雰囲気が漂っている。

レトロモダンでお洒落な浴衣は、彼女の個性をキラリと光らせているようにも思えた。


レトロモダンな浴衣はネットで検索していて可愛くて憧れたけど、私が着たらこけしみたいになりそうで断念した。


でも、瞳みたいな人が着ればこんなにも似合うのね。素敵だ。





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