残念系お嬢様の日常


『なあ…………あ、始まった』

心臓を刺激するような破裂音が響き、紺色に塗りつぶされた夜空に光り輝く火の花が開いてはとけるように消えていく。

打ち上げ花火なんてこうして眺めると久しぶりだ。

綺麗だけど、儚く一瞬で消えていくのが少し切ない。


その光景を眺めていると、電話の向こう側から微かに息が聞こえて、意識を再びそちらへ向ける。



『一日早いけど、誕生日おめでとう。真莉亜』

「ありがとうございます。景人様は参加されなかったのですね」

『大人数で過ごすのとか苦手だから無理。でも、あんたには言いたかったからおめでとうって』


景人がちょっと可愛く思えて笑ってしまうと、不服そうに笑った理由を聞いてきた。

可愛いからなんて言えなくて、照れているのかと思ったと言ってみると『バカじゃないの』と言われてしまった。


今夜は嬉しいことばかりが起きるので、私の気分はふわふわと浮いていてばかになってしまっているのかも。




< 351 / 653 >

この作品をシェア

pagetop