残念系お嬢様の日常


『まあ、言いたいのはそれだけ。あんま長電話すると花火の邪魔になるからもう切る』

「景人様、ありがとうございます」

『……別に』


花火が上がる音が二重に聞こえてくるのは、彼もどこかで花火を見てるからだ。

本当は来てくれたら嬉しかったけれど、こうして電話をくれるのは嬉しかった。

今度連絡先をちゃんと交換しておこう。



『またな』

「ええ、また」

特に長い話はしなかった。

ただ、また会えるとお互い確信している別れ方だった。

私は勝手に景人のことを友達だと思っているけれど、彼も友達と思ってくれているということでいいんだろうか。

このメンバーといるのも楽しいけれど、景人と過ごすのも楽しいから、また彼とお弁当を食べて雑談をしたい。


あの時間は私にとって令嬢というよりも、結構素で話せる貴重なものだから。





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