残念系お嬢様の日常


「迷惑だったかな」

「……いえ」

どうして私の方を見て聞いてくるんだ天花寺。

というか、あんたの登場で左側から凍りそうなほど冷たいオーラが漂っていて怖いんですけど。ひいいい!


おそるおそる視線を流すと雅様はにっこりと笑顔のまま無言で立っている。

突然天花寺が現れて、私のことを褒めたことが相当おもしろくないのだろう。

それに英美李様と天花寺は話しているけれど、自分には話を振られていないこともおもしろくないのかも。


恐ろしいほどの彼女の沈黙から英美李様は状況を察したのか、雅様に「そろそろ教室へ向かいましょう」と声をかけた。


「ごめんね、綾小路さん。引き止めてしまって」

「いえ。また今度ゆっくりお話しさせてくださいな。天花寺様」


天花寺に声をかけられて一気に気持ちが浮上したのか、雅様の表情が緩む。

明らかに雅様からは天花寺への好意が見てとれた。






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