残念系お嬢様の日常
「真莉亜!」
私を見つけるなり声を上げて歩み寄ってきた彼女——瞳はどうやら私のことを待っていたらしい。
立っているだけであんなに注目を集める瞳ってすごいな。
私なんて、チラ見されるけど見てはいけないもののようにすぐ逸らされることが多いのに。
その色気をくれ! ちょっとでいいから切り分けてくれ!
「瞳、ごきげんよう。そんなに慌ててどうしたの?」
「おはよう。その……ちょっと話が」
瞳がちらりと天花寺を見上げると、天花寺は柔らかな笑顔を浮かべて片手を上げた。
「じゃあ、俺はここで」
気を利かせて天花寺がいなくなっても、瞳の存在自体が人の視線を集めていた。
この場では話しにくいことらしく、瞳が私の手を引いて人気の少ない方へと向かって歩いていく。