残念系お嬢様の日常


「こら、スミレ。はしたない。他の人に見られたらどうするの」

これもいつも通りだ。彼女の言動を注意する役目の、真栄城瞳が呆れた様子で私からスミレを引き剥がす。


「だって誰もいないもの! いいじゃない少しくらい」

「スミレは気を緩めすぎ。そういうのは茶道室だけにして」

「はいはーい」

彼女たちと駄菓子を食べるようになってから、急激に仲良くなった気がする。名前も最近は呼び捨てで呼び合うようになった。


「真莉亜は花会参加するでしょう?」

「そのつもりよ。お二人は?」

「お菓子食べれるから参加するよ〜! 今日はなにかなぁ」

本当お嬢様って裏側に何を隠しているかわからない。『花ノ姫』でのスミレは完璧に可憐なお嬢様だ。駄菓子を貪り、「うわはははは!」って笑うようには見えない。


「食べ方には気をつけなよ、スミレ」

「瞳は心配性なのよ。スミレは猫かぶりが特技なのよ!」

偉そうに言うことじゃないけれど、ある意味すごい。あの『忍法☆すっぱいでござる』ガム事件以外は、今までボロ出してないもんなぁ。


「そういえば、ダリアの君が最近中等部の男子生徒に夢中って噂聞いた?」

スミレが少し顔を歪めて話し出す。

最近知ったのだけれど、スミレは男が苦手らしい。理由は兄たちが家と外だと全く違っていて、家だと野蛮で男に対して嫌悪感を抱いたのだとか。でも、スミレもかなりギャップがあると思うけど。





< 38 / 653 >

この作品をシェア

pagetop