残念系お嬢様の日常
「こら、スミレ。はしたない。他の人に見られたらどうするの」
これもいつも通りだ。彼女の言動を注意する役目の、真栄城瞳が呆れた様子で私からスミレを引き剥がす。
「だって誰もいないもの! いいじゃない少しくらい」
「スミレは気を緩めすぎ。そういうのは茶道室だけにして」
「はいはーい」
彼女たちと駄菓子を食べるようになってから、急激に仲良くなった気がする。名前も最近は呼び捨てで呼び合うようになった。
「真莉亜は花会参加するでしょう?」
「そのつもりよ。お二人は?」
「お菓子食べれるから参加するよ〜! 今日はなにかなぁ」
本当お嬢様って裏側に何を隠しているかわからない。『花ノ姫』でのスミレは完璧に可憐なお嬢様だ。駄菓子を貪り、「うわはははは!」って笑うようには見えない。
「食べ方には気をつけなよ、スミレ」
「瞳は心配性なのよ。スミレは猫かぶりが特技なのよ!」
偉そうに言うことじゃないけれど、ある意味すごい。あの『忍法☆すっぱいでござる』ガム事件以外は、今までボロ出してないもんなぁ。
「そういえば、ダリアの君が最近中等部の男子生徒に夢中って噂聞いた?」
スミレが少し顔を歪めて話し出す。
最近知ったのだけれど、スミレは男が苦手らしい。理由は兄たちが家と外だと全く違っていて、家だと野蛮で男に対して嫌悪感を抱いたのだとか。でも、スミレもかなりギャップがあると思うけど。