残念系お嬢様の日常
意地悪。
大っ嫌い。
馬鹿。
酷いことを言っても、兄たちは距離を置かない。でもね、知ってるの。
お母様の肖像画の前で泣いていたこと。アルバムを見ながら寂しそうにしていたこと。
スミレの前では気丈に振舞っていること。全部知っていて気づかないふりをしていた。
『え、人殺しじゃん』
誰かが口にした言葉が波紋のように広がって、スミレから距離をとるように身構えているのが見える。
意地悪ばかりしてきた男の子たちの瞳は真っ黒で、嫌悪と困惑が入り混じっているように思えた。
大人たちはおしゃべりに夢中で、兄たちも大人に捕まって話に花を咲かせている。
ここの場所だけの不穏な空気を誰も察する気配がない。
お茶会なんて来なければよかった。そしたら、こんな想いをせずに済んだのに。