残念系お嬢様の日常



『こいつ人形だから感情ねぇんじゃねぇの』


 怖い。



『気持ち悪』


 嫌い。



『この髪って本物なのかよ』


 触らないで。


先ほどまで一緒に遊んでいた女の子たちは一歩引いて、男の子たちに囲まれているスミレのことをただ眺めている。

誰も助けてはくれない。だったら、自分で言うしかない。



『やめて』

どっと笑いが起きる。

人形がしゃべったと一人が言えば、近くにいた子たちももっとしゃべれよと肩を叩いて、髪を引っ張ってくる。


怖い。嫌だ。やめてと言っても、笑われるだけ。


泣きそうになれば、人形のくせに泣くのかよと更に笑われる。

力じゃ男の子に叶わなくて、掴んでくる手を振りほどこうとしても離れてくれない。


叫んだら、きっと誰かが気づいてくれる。でも、招待されたお茶会を台無しにしてしまう。



水谷川家として参加した以上は、主催者を立てなければいけない。







< 382 / 653 >

この作品をシェア

pagetop