残念系お嬢様の日常
『こいつ人形だから感情ねぇんじゃねぇの』
怖い。
『気持ち悪』
嫌い。
『この髪って本物なのかよ』
触らないで。
先ほどまで一緒に遊んでいた女の子たちは一歩引いて、男の子たちに囲まれているスミレのことをただ眺めている。
誰も助けてはくれない。だったら、自分で言うしかない。
『やめて』
どっと笑いが起きる。
人形がしゃべったと一人が言えば、近くにいた子たちももっとしゃべれよと肩を叩いて、髪を引っ張ってくる。
怖い。嫌だ。やめてと言っても、笑われるだけ。
泣きそうになれば、人形のくせに泣くのかよと更に笑われる。
力じゃ男の子に叶わなくて、掴んでくる手を振りほどこうとしても離れてくれない。
叫んだら、きっと誰かが気づいてくれる。でも、招待されたお茶会を台無しにしてしまう。
水谷川家として参加した以上は、主催者を立てなければいけない。