残念系お嬢様の日常
『女の子相手にいじめなんてカッコ悪い。とっとと離しなよ』
子ども達の輪から少し外れた場所で、仁王立ちしているのは同世代の子にしては背が高くて中性的な顔立ちをした子だった。
服装は男の子のようで髪も短いけれど、お茶会が始まるときに女の子だと誰かが話していたのを覚えていた。
女の子たちはみんなワンピースなのに一人だけ男の子のような格好だからという理由だけではなく、彼女の醸し出す雰囲気はどこか大人びていて目立っていた。
からかい対象から外れていたのは、おそらくは彼女には勝てないと男の子たちは本能的に感じていたのかもしれない。
『この子のこと、気持ち悪いとか色々言って蔑んでいたけど、大人数でいじめて、止めもせずに見てるだけのアンタ達のほうが気持ち悪い』
『なっ……てめぇ』
『なに? 言い返せるなら言ってみなよ。今からアンタの親にこの子にしたことぜーんぶ伝えに行ってくるから。証拠がないって思ってるなら、その子の腕に赤い跡が残ってるし、怯えて泣きそうだし、全くの無実だって言うのは難しいんじゃない? で、なにか言いたいことは?』
彼女が勝ち誇ったように微笑みながら言うと、男の子は悔しそうにスミレから手を離して、消えそうな声で『ごめん』と謝罪をしてきた。
他の子達はこの光景を呆然と眺めているだけだった。