残念系お嬢様の日常
『行こ』
『え、うん……!』
優しく包むようにスミレの腕を引いて、歩き出す。
助けてくれた彼女は心配そうに髪や腕は大丈夫かと聞いてくれたので、頷くと安堵した様子で微笑んでくれた。
かっこいい女の子。今まで出会ってきた子たちとは違う意思が強くて、心優しい子だ。
『あのっ、な、名前……聞いてもいい?』
緊張で声を震わせながら俯くと、立ち止まった彼女に頬を掴まれて強引に上を向かされた。
『下なんて向いちゃダメ。ほら、せっかく可愛いんだから堂々としてればいいんだよ。人形みたいってすっごく美人ってことだよ。髪の毛だって、憧れるくらい綺麗だよ。だからほら、下なんて向かないの』
目頭が熱くなって、涙をこらえるのに必死だった。
人形って馬鹿にされていた。けど、彼女は褒めてくれる。
嫌いな髪色も綺麗だって言ってくれる。下ばかり向いていないで、彼女の隣に立てるような人になりたい。