残念系お嬢様の日常
「ダリアの君って……詩央里様が?」
「ああ、噂になってるよね。最近男子の校舎を眺めてため息をついているって」
噂になってるの? 全く聞いたことなかった。
ダリアの君とは中等部の『花ノ姫』のリーダー的存在だ。まとめ役でしっかりとしていて優しい先輩。漫画通りなら高等部へ進んだら、時期に『花ノ姫』の会長になる存在のはず。
そんな彼女が恋をした相手は誰なんだろう。もしかして、相手は天花寺様たち三人組の誰かなんだろうか。漫画の中だとその描写はなかったけど、あくまでヒロイン主体の物語だから語られなかっただけかなぁ。
「あーあ、憂鬱だわ。高等部に進んだら男女混合になるんですもの」
「まあ、スミレは大変そうだよね」
瞳の言葉の意味はなんとなくわかる。
スミレは小柄で守ってあげたくなるような可憐な容姿だから、おそらくモテるだろう。いやでも男が寄ってきそうだ。でも、かっこいい系の女子の瞳もひっそりと想いを寄せる男子がいそうだ。
私は……モテないだろうなぁ。なんてったって気の強そうな顔だし、男には恐れられそうだ。それに婚約者が一応いるから寄ってくる人なんていないだろう。
「ハッ! そうだわ! 私、思いつきましたの。カシフレはどうかしら」
「ええっと、何の話かしら」
「私たちの部活動の名前よ!」
どうやら私たちは部活動をしているらしい。そんなつもりはなかったけれど。それにそのカクテルみたいな名前はなんだろう。
「ねえ、スミレ。カシフレって何の略なのかしら」
「お菓子フレンズ!」
……いや、それ部活じゃなくない?
「略してカシフレよ!」
「真莉亜、授業に遅れるから行こうか」
「ええ」
私と瞳は顔を見合わせて、スミレを置いて歩き出した。
スミレはしばらくいじけていた。