残念系お嬢様の日常
あまり話したことはなかったけれど、雅様たちの前でも臆することなく堂々としていて表情からは感情は読み取れない。
「……どういう意味かしら」
「わからないならこれ以上話ても無駄だからいいよ」
笑顔を貼り付けたままの雅様に対して、真莉亜の弟は表情を変えずに淡々とした口調で返した。
彼は雅様が本当に意味をわかっていないとは思っていないだろうけれど、結論の出ない会話を繰り返すことが無駄だということなのかもしれない。
雅様はあくまで本音を隠している。笑顔の裏側の黒い部分を薄いベールに包んで、毒を少しずつ敵に向けていく。
「雲類鷲様、私たちが花ノ姫であることはご存知ですの」
黙っていられないといった様子で英美李様が一歩前へ出た。けれど、彼の表情は全く変わらない。
いや、多少面倒くさそうにしているように見えるわ。
「一応知っているけど、それがなに?」