残念系お嬢様の日常
真莉亜は目を細めて、一木先生の胸ぐらを掴むと耳元でそっと囁く。
「〝貴方に会いたい〟って言われて、期待しました? 残念ながら、会いたいは恋しいからという意味だけではありませんわよ。————馬鹿な人」
それはぞくり背筋を撫でるように甘く冷たい声だった。
普段の真莉亜からは想像がつかないほどの豹変ぶりに、スミレまで驚いてしまう。
これも彼女の作戦の内なの?
「……僕はただ、彼女が、人形みたいに綺麗な彼女を見ていたかったから、だから、それで……なんで、こんなことに……」
人形みたい、か。そう言われるのは、幼い頃からずっとだったから慣れてしまった。
一木先生は、内面に惹かれたわけれはなくて、外見に惹かれただけ。
きっとスミレ自体には興味がないんだと思う。
「写真の中に閉じ込めるのが楽しくて、それで……」
「も、もう聞きたくありません。二度とこういうことをしないでください! 誰かに見られているのかと思うと、ずっと怖かったんです!」