残念系お嬢様の日常
「一木に辞めるように言ったのはアンタだろ? あの男が自ら言うようには思えない」
「え」
「紅薔薇だけあの部屋に残った理由はそれしか考えられぬからな。おそらく菫の君には少々刺激が強いから追い出したのではないのか?」
たしかに私だけ残るのは妙だものね。
辞めさせるためっていうのもあるけれど、裏で動かしていた人物を吐かせることが目的だった。
それは二人には言う必要ないけれど、辞めさせることに関しては誤魔化しても無駄だろうし認めるしかないかしら。
「辞めるように追い込んだなんて、怖いことする人だと思う?」
「いや、辞めさせて当然だね。女子高生を盗撮する男なんて教師をする資格ない。でも、アンタのしたことは怖いというよりも、むしろ甘いとは思うよ。どうせ理事長や他の教員、保護者たちに真実を伝える気はないんだろ」
「あら、それもバレてしまっているのね」
「日頃のアンタを見ていればわかるよ。盗撮相手が水谷川だって広まったら、嫌な思いをするのは彼女だ。広まらないように教師に口止めをしても、水谷川の保護者には報告がいく。それを本人は望まないのをわかっていて、防ぐためにした最善ってことでしょ」