残念系お嬢様の日常
どうせいずれ伯母様とは話をしなければいけなかった。
久世との婚約の件だって、最終的には破棄することを伝えるつもりだ。
伯母様は久世を気に入っているから激怒するでしょうけど。
ある意味この写真が送られてきたのはいい機会だ。
本当は在学中だけはおとなしくしていようかと思っていたけれど、久世との婚約破棄に向けて本気で動きだすべきかもしれない。
握りしめた手にじわりと汗が滲み、心臓の音が全身に伝わってくるほど自己主張をしている。
大丈夫。落ち着け、私。
廊下に響く、擦れるようなスリッパの音。
いつもブランドものに身を包んだあの人には不釣り合いでほんの少し表情が崩れる。
けれど、すぐに顔を引き締めて振り返ると予想どおり本日も高そうなお召し物。
オフショルダーの露出度の高い服装に顔を顰めそうになってしまったけれど、必死に耐えた。
この人は相変わらずだ。
「真莉亜」
この人が私の名前を呼ぶときはいつだって棘を感じる。