残念系お嬢様の日常
雨宮の言う通り、私が逆の立場だったら不安だわ。
それに気持ちを伝えられたのに私は返事を返していない。
返事がほしいとは言われていないけれど、有耶無耶にしておくのはよくないわよね。
原作の真莉亜なら大喜びだっただろうけど。
恋愛、か。
久世との婚約破棄のこととか、私を陥れようとしている人のことで頭がいっぱいで恋愛からは遠ざかっている。
医務室に着くと、ちょうど先生が中から出てきたところだった。
今から職員室へ行ってしまうということだったので、事情を伝えて許可を貰って雨宮と室内へと入る。
「滲みる?」
少しだけ血がにじんでいる手に消毒液を垂らし、耐えるように眉根を寄せた雨宮の顔を覗き込む。
「ん……少し。けど、我慢できる程度だから大丈夫」
鼻を掠める消毒液の匂いが懐かしい。
前世では中学生の頃に部活で生傷を作るたびに保健室で消毒してもらっていた。
女の子なんだからあんまり傷を作らないようにしなさいなんて先生に言われていたけど、膝にできた傷はなかなか消えなくて心配されてたっけ。
けど、それも高校生で人生を終えた前世の私には関係なくなってしまった。