残念系お嬢様の日常
そもそもいざというときって、どんな危険を連想してるんだ。そうそうないだろう。蒼は止めないのか不思議だ。まあ、蒼の場合は真莉亜のすることにはあまり口を出さないか。
瞬発力と体力って、この女は何を目指しているんだ?
「お前、そんなやつだったっけ」
「まあ……そんなやつとは、どういうことかしら。そもそも貴方は私の一割くらいしか知らないわ」
一割。言う通りかもしれない。俺は真莉亜をちゃんと知ろうとしてこなかったし、互いに嫌い合っていたから必要以上の会話もしてこなかった。
「貴方の知らない私がいることは、不思議じゃないでしょう」
「そうだな」
今日知った真莉亜の一面は大分不思議だけどな。
「けど、令嬢が身体を鍛えるのはどうなんだ」
「私はあくまでソフトマッチョを目指しているのよ。さりげなくだもの。太マッチョにならなければ平気だわ」
真莉亜の口から、マッチョという単語が出てきたことにまず驚きだ。本当にこいつはどうかしてしまったのだろうか。頭を打ったとか?
真剣な表情で『瞬発力を身につける五つのメソッド』を読んでいた真莉亜だが、それは背後から近づいてきた人物にあっさりと奪われてしまった。