残念系お嬢様の日常


「ぅ、わ!?」

「姉さん、人前でこういうのは控えた方がいいって言ったよね」

本を奪ったのは真莉亜の弟である蒼だった。弟といっても俺らと同い年で、同じ学校。俺も会えば少しくらいは会話を交わす。


「だ、だって!」

「だってじゃない」

「でも!」

「でもじゃない」

この二人はこんなやりとりをするような姉弟だったか? 真莉亜ももっと気が強くて、口調もお嬢様といった感じのものだった気がする。


「偉そうで無愛想で感じ悪い久世のことがいくら嫌だからって、変な本を読みながらダンベルで鍛えるのは良くない」

「いや、待て。お前、さりげなく俺の悪口含まれてるぞ」

「……そう?」

そうだった。こいつはこういうやつだった。

蒼はあまり周囲には関心がないが、家族のこととなると別。真莉亜の婚約者でありながら互いに嫌がっている俺らの関係を良く思っていないのだろう。


「あと姉さん、トレーニングルームに行ったらダンベルの数が前より増えていた気がするんだけど」

「えっ? そうかしら、そうだったかしら。おかしいわねぇ。どうやって増えたのかしらねぇ。不思議だわぁ」

「ダンベル購入禁止。そんなにあっても意味ないから」

「ええっ! 微妙に重さが違うのよ!」

「はい、犯人自供しました」

「謀ったわね!」

このくだらないコントみたいな会話のやり取りはなんだ? 本当に真莉亜なのか?





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