残念系お嬢様の日常


機嫌を損ねてしまったらしく、姉さんは口を尖らせている。

口には出さないけれど、俺のことを心配して来てくれていることはわかっていた。



『ねえ、蒼。私ね、弟ができてうれしいの』

胸元に抱えた枕に顔を埋めてしまっているから、姉さんがどんな表情をしているのはかはわからなかった。

けれど、その一言は家族を亡くした俺にとっては救いのように感じた。



『……私、ちゃんとお姉様をするから。蒼が寂しくないようにそばにいるわ。蒼の本当のお父様とお母様が天国で見守ってくれているはずだもの。だから、蒼は幸せになるの。それを私はそばで見守るの』


伯母さんに言われた〝雲類鷲には必要のない人間〟という言葉は容赦なく俺の心に刺さっていて、それを姉さんの言葉が溶かしてくれた。



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