残念系お嬢様の日常
桜の花びらが落ちる前に
時は止まってはくれず、ついにこの日がやってきてしまった。
迎えてしまった中等部の卒業式。
高等部に上がれば、いよいよ『恋にほんの少しのスパイスを』がスタートする。
私を殺そうとしている人物とは、既に出会っているのだろうか。ああ、怖い。考えるだけで鳥肌が立つ。どこだ、どこにいるんだ犯人。
「真莉亜お姉様! ご卒業おめでとうございます!」
式が終わると、女の子たちが私に真紅の薔薇のミニブーケをくれた。泣いていたのか目が赤い。
「まあ、素敵。ありがとう」
お姉様といっても私は彼女たちの姉ではない。『花ノ姫』の女子生徒たちは、親しみを込めてお姉様と呼んでくる人たちもいるのだ。もちろん〝様〟付けをする人もいるけれど。
少し変わっているのは〝お姉様〟と呼ぶには、本人に承諾を得なければいけない。『お姉様とお呼びしてもよろしいでしょうか』=『妹として可愛がっていただけますか』ということらしい。
スミレの場合は、いつもの猫かぶりでこてんと首を傾げてはぐらかしていた。花ノ姫の中では、そういった関係が煩わしいと思う人もいるみたいだ。