残念系お嬢様の日常
特待生である浅海が授業に出ないのはまずいため、一人だけ教室に向かわせた。
真栄城さんたちに連れて行かれたのは、東校舎のカウンセリングルーム。
そこにいたのは男子生徒だった。
どこかで見たことがある気がするけれど、わからない。
「彼はけーくんだ」
東雲さんはうさぎのパペットを動かして、けーくんと呼ばれた男子生徒の肩に乗せる。
彼は少し呆れたように苦笑してから、俺に向き合った。
「桐生景人。よろしく。弟くん」
人の良さそうな微笑みを浮かべているけれど、どこか胡散臭い。
桐生という苗字を聞いて、すぐに桐生拓人の顔が浮かんだ。
そういえば兄がいるはずだ。
年上だからほとんど関わることはないし、話したことも今まではなかった。
俺の考えていることを察したのか「拓人の兄だよ」と言葉を続けた。